第7章 個別的労働関係法
人事権
「人事権」は、最も広義には、労働者を企業組織の構成員として受け入れ、組織のなかで活用し、組織から放逐する一切の権限を指す。より狭義には、「人事権」とは、採用、配置、異動、人事考課、昇進、昇格、降格、求職、解雇など、企業組織における労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限を指していると考えられる。
このような人事権は、いくつかの局面では重要な法規制を受けており(解雇の法規制、均等待遇原則、女性の機会平等、不当労働行為の禁止、短時間労働者に対する差別待遇の禁止 等)、また、労働協約、就業規則、労働契約などの規制を受けることもある。
したがって、正確には、使用者は、これらの規制の範囲内で一方的決定権限としての人事権を有することとなる。